大会参加レポート

本会議に、全日本能率連盟 国際企画ワーキンググループの主査であり、また認定マネジメントコンサルタントとして初日の司会進行をお勤めいただきました萩原 泰之氏より当日の模様をレポートいただきました。以下そのレポートです。

公益社団法人 全日本能率連盟70周年記念ICMCI国際経営コンサルティング協会協議会Asia Pacific Hub Meetingが去る5月27日と28日の二日間東京新宿の京王プラザホテルで開催された。アジア各国、欧州、日本から総勢 100名を超える参加者が集い、「 The Transformation Driver 〜Technology and our future〜」という開催テーマのもと、日本、韓国、中国、シンガポールからの講演、報告など大変に活発なプログラムとなった。  現在世界はかつてない速度で変化している且つ、抗うことのできない流れとなっている。この中で、マネジメントコンサルタントは変化を牽引する決意をこめて、動静の「フォロアー」ではなく「ドライバー」となるが今回プログラムの趣旨となっていた。 今回日本側企画ワーキンググループ主査として参加しました。概要と印象を報告いたします。

ICMCI ISO20700の説明

 全能連 中村会長とICMCI Chaiman Mr. Mihalicz から歓迎のご挨拶が述べられた後、ICMCI Director Mr. Bodenstein より ISO20700 の最新の状況についての報告がありました。 IS020700は2017年に制定されました。いわゆるコンサルティングサービスを「提案、提供そして終了」するという一連の流れに関し、品質をきちんと担保することが重要との認識から生まれたものです。 ICMCIとしては、マネジメントコンサルティングが高い品質を保ちつつ、クライアントに役立つものとするためには、各国の IMC(The Institute of Management Consultants :各国の協議会加盟団体。日本では全能連)を通じて、ISO20700取得を広げていくことが大切との提案がありました。同氏からは、「Big 4などと違い、我々中堅のコンサルタント事業体は、こうしたCertificateが生かされる場面があるのではないか」との言及がありました。 一方、日本を始め各国にはそれぞれの商習慣がありコンサルティングの進め方も異なる部分も多々あります。できるだけクライアントとの個々の関係の中で、有効な場面には適応していくというのが現実的ではないかと感じました。

「Transformation Driver」に関連した各講演

① 「Game Changer of Retail in China」(Mr. Jerry Ji:中国)

プログラムテーマに沿った最初のプレゼンテーションは、急成長している中国の小売業大手 Alibabaグループが展開する新たなショッピング経験でした。 同グループビジネス企画部長 Ji氏からテクノロジーを駆使した新たなショッピングのフォーマットについての報告がありました。 ⑴ 新鮮な食材を店で購入し、その場で調理する。そしてその場で味わう。 ⑵ 消費者ひとりひとりに買い物袋が用意され、店舗から3キロ以内は無料で配達される。 ⑶ 自宅でインターネットショッピングすると、30分以内に無料で配達される。 テクノロジーは、スマホとインターネットを基盤としていて、今までの「店舗に行き、購買し、持ち帰り、調理する」というプロセスを根底から覆すものと感じました。 3年前に始まったAlibabaショッピングビジネスは、今や中国全土で300店舗に拡大しているとのことでした。

② 「トヨタ自動車における質創造活動」(トヨタ自動車株式会社 元副社長 佐々木眞一氏)

午後のプログラムは日本からのレポートから始まりました。英文タイトル「Customer First Activities of Toyota」と題し、日本を代表する巨大な自動車会社が、いかに品質を維持、向上させてきたかにつき、現実の課題と対処も含め具体的な説明がありました。 長いクルマづくりの歴史の中で、実はトヨタ社は何度か品質の危機に陥ったとのことでした。品質管理の手法やプロセスはどんどん高度になっていったが、現場にいる人間のモーチベーションは逆に低下していった。トヨタ自動車のすごいところは、品質を管理するということを単に効率に焦点を当てるのではなく、そのプロセスを実行する人間:人のやる気も考慮し、総合的にカイゼンを実行すると理解しました。 最近の例として、自動車のもつ意味をカスタマー視点で、根底となる価値そのものから見直しをしていることが紹介されました あのトヨタ自動車にして、クルマはもはや移動手段という役割より、ドライビングで何を体験するかが重要と捉えていることが説明されました。 まさに、「モノ」から「コト」です。 過去最高の売上を記録したトヨタ自動車にして、常に危機感を持ち、企業価値を客観的に見る点は非常に印象深いものがありました。 

③ ICMCI AP Hubからの報告

その後、韓国と中国のIMC(ICMCI各国組織)からコンサルティング事例報告がありました。 

Shift ordinary learning into high performance learning(Dr. Jeon Je-Phil – 韓国)

いかに通常行われている学習プロセスをいかに高度な成果を得られる学習に変えていくのかについて、AIを利用したいくつかの試みについてDr. Philから報告がありました

Technology development and management consulting (Ms. Gu Lili – 中国)

中国の病院等医療関係のマネジメントシステムをいかに改善していくかについて、具体的な事例を含めながらマネジメントコンサルティングの有効性についての報告がありました。

Consulting in Digital Age – Symbiosis between CMCs and Robots(Mr. Liew Shin Liat –シンガポール)

DX(Digital Transformation)が、社会そのものや政府機関、事業会社に非常に大きな影響を与えている状況の中で、果たしてマネジメントコンサルタントはテクノロジーに対してどのような立ち位置で、どのような関わりをもっていけばよいのか。この非常に興味深いテーマでMr. Liewから自らの経験を交えたプレゼンてーションがありました。 RPAを始めとしてRoboticsが従前の人間の仕事を奪っていく。シンギュラリティー;すなわちいつかロボットが、テクノロジーが人間の能力を超えていく日が近い将来くる。 マネジメント・コンサルティングは予想される事態にどう対処していけばよいのか? Mr. Liewから示唆された4つの人間の能力の中で、1)単純な繰り返し処理、2)分析はテクノロジーに取って代わられる可能性がある。しかし、3)創造性や4)倫理でロボットは人間を超えることはないのではないかというコメントが非常に印象的でした。 そうであるならば、コンサルタントは、クライアント事業の創造性と倫理・コンプライアンスを高めるためにどのようなアドバイスと支援をしていけばよいのか:大きなテーマであると感じました。

④ 社会構造の変化を踏まえた人生 100年時代の働き方(経済産業省 産業政策人材室 室長 能村幸輝氏)

最後のご講演として、能村氏から人生100年時代の働き方改革について政府の認識と今後の方向についてプレゼンテーションがありました。 (1) 従来の人生 60-70年に比べ、60歳からの時間が非常に伸びている。 (2) 企業も同じビジネスモデルを長く維持していくことができなくなってきている。 (3) この状況の中で、労働者は人生の各ステージに合わせた自分自身のキャリア構築、育て方が非常に重要になってきている。  この中では、企業としては、変化するビジネス環境をポジティブに対処するための人材確保と育成が課題となる一方、労働者は企業に依存することなく自らの価値を高めるキャリア開発が重要との示唆がありました。 従来の会社と社員が「20歳前後からの人生を共に歩む」関係から、「20歳前後から60歳を超えて70−80歳に至る人生の各ステージで個別な共存関係をもつパートナー」と変化することが必要でなないかと強く感じました。 私自身、キャリアコンサルタントとして活動しており、60歳を超えてより自律的な人生を歩みたいという方へのアドバイスを行っています。まさに「働き方改革とはみずからの長期ライフプランをじっくり考え、スキルを深めるための時間」と感じた次第です。 ⑤ クロージング(ICMCI Asia Pacific Hub会長の Lydia Goh氏) 今回のセミナーへの参加を感謝するとともに、成長するアジアパシフィック圏でマネジメント・コンサルタンティングはさらに重要となる。そのためにも各国のコンサルタントが様々なトピックスでさらに連携を深めることを望むとのコメントがありました。

その後、Gala Dinner(懇親会)が開催され70人を超える参加者がありました。アトラクションは「江戸太神楽」。元来、神事であることなど説明と各種の芸の披露があり、海外からの参加者のみならず日本の参加者も大いに日本文化の理解を深めることができました。